90人が本棚に入れています
本棚に追加
「何か、ワンコみたいで可愛いーね。」
その言葉で我に返った。
「動物好きなんですね。」
「うん。」
今だニコニコと頭をなで続ける彼女は、辞める気配がなさそうだった。
どうやら、ペット認定みたいなものをされたようだ。
「私は犬じゃありませんよ。」
「わっ!!ごめんね、つい!」
ぱっと離れた手から、すぐにその分の体温が失われた事がわかった。
慌てて差し出されたお茶をぐいっと飲んだ。
熱かった為、少し口を火傷した気もするが、気にはならなかった。
そして、しまをそろーと、ゆっくりベッドに戻し、驚かさないようにそろっと立ち上がる。
あれから色々猫の事を調べたが、猫は突然の物音や動きにびっくりしやすいらしい。
「ご馳走さまでした。」
「え?え?」
慌てて後を追いかけてきた沙樹に腕を掴まれる。
「ご、ごめんなさい。馴れ馴れしく撫でちゃって。」
「いえ、そうではなくて。」
「怒ったんでしょ?」
「苦手、なんです。人と関わるのが。聡美さんの、店の人が言ったことは気にしないでください。仲良くしなくてもいいので。」
ご馳走さまでした。
と、最後にそう伝え、部屋に戻り、急いで毛布に潜り込んだ。
その時ばかりはベッドの上で。
最後にみた彼女の悲しそうな表情を早く忘れたくて、無理矢理違うことを考え、意識を他に飛ばした。
そうでなければ、心がやけに痛んでしまうから。
最初のコメントを投稿しよう!