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8畳ほどのマンションに、段ボールが4つフローリングに置かれた。
「めぐみ、本当に荷物これでいいの?」
そう後ろから声を掛けたのは、雇い主のオーナー、忍。殺風景なこの部屋を呆れながらも見渡した。
「はい、元々荷物少ないので。ありがとうございます。」
キチンと角度を決め、頭を下げるめぐみに、ぱしんと軽くその頭をはたく忍。
「あんたって、本とくそ真面目。」
「本当に感謝してるです。保証人までなってもらって。」
そう、この部屋を借りれたのも彼女が保証人となってくれたらだった。
店の屋根裏部屋で半年ほど住み込んでいためぐみであったが、お金もたまり部屋を借りることにしたのだ。
「あぁ、それと私からのプレゼントよ。引越祝いと思って受け取りなさい。」
そう言われると、数人の業者のような人が大きな板を運び入れてきた。
そして丸い白い物体も。
手早く組み立てられたそれは、ベッドだった。丸まったものは、マットだったらしい。
「いいん、ですか?」
「床じゃなくて、ちゃんとベッドで寝なさいよ?」
「はい。ありがとうございます。」
本日2回目のお辞儀に、やれやれと忍はため息をつきながら、手を振った。
「明後日から通常出勤よ。それまで部屋らしく模様替えしなさい。」
「はい。」
忍を玄関まで送り、エレベーターに乗るまで見送った。
そして、ベッドのみ立派に構えられた部屋を見渡し、深呼吸した。
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