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やっと
やっと、ここまで来たのだ。
服を脱ぎ、タンクトップ姿でベッドに倒れ込んだ。
見上げる天井には、見慣れぬ電球。
ここは、雨にも風にも困らぬ家。
誰かにみつかり、逃げることもない。
お風呂も自由に入れる。
飲み水も公園に行かなくて済む。
「・・・毛布、買いにいくか。」
そこまで回想し、現実に戻った。
ベッドとマットは揃ったが、掛け布団や毛布がなかったのだ。
バスタオルでも良かったが、枚数もそこまでない。
「贅沢になったな、私も。」
自虐的に笑いながら、脱いだシャツを再び羽織い、財布を握った。
結局軽い掛け布団と毛布を購入し、食べ物ももてる範囲かった?
かさばる荷物がとても邪魔くさい。
「あの、どうぞ。」
エレベーター待ちの時にドアを開け待つ女性が声をかけてくれた。
「ありがとうございます。」
相変わらず愛想のない声ではあったが、両手も塞がっていた為お言葉に甘えたが、
降りる階も同じだった。
そして、隣の部屋の住人だと知る。
「あ、隣に越した方だったんですね。よろしくお願いします。」
ニコッと微笑む彼女は、とてもなつっこく、眩しい光が差し込んでいるようにも見えた。
「あの、ちょっとそこで待ってて貰えますか?」
「え?」
鍵をあけ、布団を玄関に投げた。
そして袋からお弁当と飲み物だし、ビールが2本入った袋を彼女に渡した。
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