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「お昼、配達を始めるわよ。」
それは突然のオーナー、忍からの提案だった。
いや、言い出したら有言実行のオーナーからすれば、これは決定事項。強制だ。
あからさまに嫌そうな顔をするめぐみに、忍はにっこりと微笑んだ。
「もうツテで2社から注文は貰ってるから、よろしくね。」
すでに。
ここは昼はカフェ、夜はバーを経営している。
昼のカフェはほぼ常連で埋まるが、定番のクラブハウスサンドが好評で配達を始めるらしい。
確かに繁盛するのは嬉しいが、配達となると店の顔にもなる。
めぐみは自分の無愛想な顔には向いてないと思うが、それは忍も承知の上だった。
「ほら、いってらっしゃい。はい、これビルの名前。近くだからすぐ分かるわ。」
「・・・はい。」
「はい!いってらっしゃい!」
背中を叩かれ、追い出されためぐみ。
仕方ない、さっさと終わらさなければと腹をくくりビルに向かった。
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