st.1 はじまり

5/10
前へ
/77ページ
次へ
「お昼、配達を始めるわよ。」 それは突然のオーナー、忍からの提案だった。 いや、言い出したら有言実行のオーナーからすれば、これは決定事項。強制だ。 あからさまに嫌そうな顔をするめぐみに、忍はにっこりと微笑んだ。 「もうツテで2社から注文は貰ってるから、よろしくね。」 すでに。 ここは昼はカフェ、夜はバーを経営している。 昼のカフェはほぼ常連で埋まるが、定番のクラブハウスサンドが好評で配達を始めるらしい。 確かに繁盛するのは嬉しいが、配達となると店の顔にもなる。 めぐみは自分の無愛想な顔には向いてないと思うが、それは忍も承知の上だった。 「ほら、いってらっしゃい。はい、これビルの名前。近くだからすぐ分かるわ。」 「・・・はい。」 「はい!いってらっしゃい!」 背中を叩かれ、追い出されためぐみ。 仕方ない、さっさと終わらさなければと腹をくくりビルに向かった。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加