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「ご注文ありがとうございます。クラブハウスサンド5つ配達にきました。」
従業員もそこまで多くない中小企業のビルの受付の女性に紙袋を渡しながら、伝えるとスムーズにお金を払われ一瞬で事は終わった。
案ずるがより産むが易し。
まさしくだった。
「これなら、大丈夫か。」
ほっと安心したのも束の間だった。
次のビルはまさに予想通り、無愛想を指摘され、お金を片手にネチネチネチネチと事務の40代らしき男性に攻撃された。
後ろではまた始まったとばかりに、ヒソヒソと女子社員達が話し出す。
「君は接客業というものを舐めてる。」
「僕がオーナーだったら即クビだ。」
「学歴が低い事もうなずける。まったくこれだから学歴のないやつは。」
そろそろお金を払って貰うか。
めぐみは会社の時計で10分はかっていた。その時間はサービスだと思っている。
「そろそろお金を頂いてよろしいですか?」
「それが生意気だっていうんだ!」
男はばしっとお金を投げつけ、怒鳴った。
特に表情もかえず、お金を拾うと、
「そういう姿がお似合いだな。」
ツバを吐きそうな勢いで言い捨てられたが、それも特に気にならなかった。
罵倒は聞かされ慣れてる。
「あら?」
そこへ来客らしきスーツの女性がお金を拾うめぐみを見て声をあげた。
「落としたの?はい、これ。」
入り口辺りに落ちていた小銭を拾い上げ、手渡しされた。
「・・・ありがとうございます。」
ついお礼をいうタイミングが遅れてしまった。
その人はつい最近会ったばかりの人だったからだ。
「ご注文ありがとうございました。」
しかし、それは言わず、社員の方へ頭を下げ、すっと隣を通りすぎた。
いくら隣の住人とはいえ、関わるつもりはなかった。
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