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とは言え、彼女の性格を考えると、生徒会長なんて役職を到底引き受ける筈は無いんだけど、きっと彼と……ツカサ君と出会って変わりつつあった彼女であれば、今頃生徒達から担ぎ上げられていても可笑しくはなかった。
「話は少し逸れてしまったが、現生徒会長を補うのには、家柄もあって実力がある人間が必要だった。その点貴様達二人ならば、条件を満たしている上に、比較的生徒会に組み込むに当たって、人間関係も良好で最適だったのだ。それに生徒会は実質この学院でのトップの組織だ。貴様の考えとだって噛み合っているだろう?」
「……僕が望んでいても、彼女が望んでいるのかはわかりません」
「護るとは……そういう事だ。自分を持てるようになったのは良いが、貴様は毒され過ぎだ、甘い」
「そう……ですよね」
「だが、甘さを全て忘れてもいけない、甘さを全て忘れた人間は兵器と何ら変わらない。……私の師匠の受け売りだがな。任せたぞ、副会長」
「心遣い感謝します、ルイス=エバイン学園長」
学園長室を後にして、渡された書類を脇に抱えた僕は、階段を下って、さっきまで居た部屋と負けず劣らずの大きさの扉を潜る。
「ごめんなさいね、わざわざ取りに行かせちゃって」
そうして生徒会室と書かれたプレートのある部屋に入るやいなや、部屋の一番奥に座っている人物からそう声を掛けられた。
「気にする必要はないよ、君だって大変なんだし。魔闘祭が控えているんだから夏休みに入る前に大体終わらしておかないと。僕は君をサポートする役目だからね」
「アラアラ、頼もしいわね」
言葉遣いに不釣り合いな野太い声を発する筋肉質で大柄な僕の友人は、手元の書類の量に疲れなんて見せない目元に長い睫毛の伴う瞼を片目だけ合わせて、僕に向けて瞬きをする。……早く誰か来てくれないだろうか。
そんな願いが通じたのか、二人きりで何処と無く居心地の悪かった生徒会室タイミングよく生徒会室の扉が開かれた。
「す、すみません……少々手間取っちゃって……」
「いやー、困っちゃったよ。ルーナちゃん凄い人気でさー」
「レディちゃんも人の事言えないだろ……」
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