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扉から入ってきたのは僕と同学年の二人の女子生徒と一人の男子生徒。一人は封筒に入った書類を両手に抱えて何処か泣きそうな表情をした書記の少女、もう一人は飄々とした雰囲気で楽しげな笑顔を浮かべている会計の少女、最後の一人は疲れた様子で背中を曲げてとぼとぼと入ってきた庶務の少年。
其々に別々の、ちぐはぐな表情を浮かべる彼ら彼女らは前年度同じクラスで、今年は三人共同じクラスにはならなかったものの、相変わらず仲が良い。
「だから僕がついでに回収してくるって言ったじゃないか」
「つーか、俺だけ行った方が良かったよな……」
「まあまあ、一応部活の申請書類は全部集まった事だし、今更気にしない。ルーナがてんやわんやしているのを見ているのも面白かったしね」
「すみません、私のせいで……」
冗談に対しても真面目な彼女は表情を曇らせるが、それを見ていた生徒会長は立ち上がって、貰いたてホヤホヤの部活の申請書類を受け取りに行く。
「謝らないの。ワタシ達が見誤っちゃっただけよ、貴女の人気を、ねっ!」
「まあ、ボクが居る限りルーナは誰にも渡さないんだけどね!」
「レディちゃんも勧誘されてたのによくそんな元気でいられるよな……」
「ふふん! ボクの受け流しテクを嘗めてくれては困るのだよ!」
今となっては見慣れたこの光景は、かれこれ一ヶ月になる。例年通りなら、もう少し見慣れなかったりするのだろうけど、今年は色々とどたばたとしてしまったせいか、一日一日が濃厚だった。
それは勿論、今から約五ヶ月前の出来事だって関係している。
二日間。魔飽祭とその前日から、色々な物が瓦解して、変化した。一日目はかけがえのない命達がたった一人に奪われて、二日目に世界その物の在り方が変わった。
影響があったのは、どちらかといえば後者の方。この学校の生徒が死んで、恐れて減った影響は微々たるものでしかない。世界ってものは伝説の通り二つあった……それだけだけど、たったそれだけの事実が人々に深く影響を及ぼした。
簡単に言ってしまうと、ある日突然世界が二つになったというのは、ある日突然隣国が増えたということだ。
このハルバティリス王国は、比較的早くその隣国へ対応を行ったため、他国に比べるとまだ影響が少ない方ではある。しかしそれでも少なくとも僕らが忙しさに辟易する位の影響はあった。
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