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  * * *  奇跡の続きはあれから一ヶ月が過ぎて、そして悪夢が消え去った三月某日――正午。  懐かしいあの町にある駄菓子屋の店先から始まった。  何も変わらない駄菓子屋の建物。その軒下に高校生くらいの女の子がいるのを確認する。 「本当、つくつぐ俺って奇跡に恵まれているよな」  用意してきた紙飛行機を手にして、目の前にいる女の子めがけて悪戯に飛ばす。 「飛行機はさ、着陸に失敗したけど、俺はずっと意識不明の状態だったんだ。俺だけが……眠ったまま九年も経っていたんだってよ」  まっすぐに飛んだ飛行機は、ふわりとその子の肩に上手く着地した。  衝突の衝撃に気がついたその子は、背筋をピンと伸ばすと、恐る恐るといった動作で振り返ってきた。 「……でも、俺の九年はきっと――いのりと一緒に過ごしていたんだろうな」  だって――……。 「なっち……?」 「ただいま、いのり」 「な……っち!」  紙飛行機を握りしめて、いのりは駄菓子屋の軒下から一気に俺の場所までかけてきた。  手のひらの中にある紙飛行機と同じ、表情をくしゃくしゃにするもの構わないで。飛び込んできたいのりを、俺は受け止めて抱きしめた。  まだ少し、なれない身体にふらふらとするのが頼りなかったけれど、強く抱きしめた。 「なっち? 本当に、なっちだよね? 嘘なんかじゃ……もう夢なんかじゃないんだよね」 「ああ」 「あの時と一緒のなっちだ、なっち本当に帰ってきた。大きくなって……でも、夢じゃない」  泣きじゃくりながら、いのりも確かめるように力強く抱きしめてきた。  そんな彼女を抱きしめた感触も、温もりも、腕の中にある表情も、いのりが言う通りあの冬の夢と同じ。  
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