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* * *
…………。
そして現在の俺は、あの頃の後悔と一人の女の子のことが忘れららないまま、相変わらず高いところでぼんやりとしている。
たったそれだけのことなのに、他に何もしなくても、あっという間に時は過ぎ去って背も伸びていた。
身体ばかり大人になっても、中身は小学校三年生のままで。
ただ変わったのは、暇つぶしに紙飛行機を折るようになったことくらいか。
すう……――と、何機のも紙飛行機が空を渡っていくのを、今度は小高い丘の上で眺める。どれか一機くらい、いのりのもとへ届かないかと。
でもやっぱり、一番はもう一度目を見て話せる距離に近づきたい。
背の高い木の下で想いも一緒に飛ばす。
会いたい。
会って、もう一度だけ話がしたい。
駄菓子の味が口の中に懐かしい。
傍に誰もいないで、一人高いところにいるのが寂しい。
好きになった気持ちが嘘でなければ、たとえ伝えられなくても、好きになるくらいいいじゃないかと思っていた幼い自分が馬鹿だった。
あの時、俺のノドを引き裂こうとして言えなかった言葉は「さよなら」の四文字ではなくて「好き」の二文字のほうだったのだと、今気づいている。
その証拠に、九年たったいまの俺には後悔しか残されていないのだ。
もし、神様が優しい人なら願いをきいてほしい。
そしたらきっと、ちゃんと謝ることができるから。そしたら、本当の気持ちをいのりに伝えてみせると約束できる。
そう願って、紙飛行機を飛ばした。
その時、紙飛行機に乗せた俺の想いをききとげたかのように、真昼の空がひっくり返った。
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