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  「すばる……?」  ひっくり返った真昼の空は、一瞬にして夜空に変わっていた。  ツン……っと冷たい冬の夜の匂いがする。  白い息が上って消えていく夜空には、星が輝いていて。  驚き、丸く開いた俺の目に最初に飛び込んできたのは、すばるの星だった。  一体何が起こったのか。  小高い丘に立つ俺はわからないまま、夜空に消えていった紙飛行機を追うように手を伸ばす。必然とすばるの星に手を重ねることになれば、集まった小星の星団は一斉に瞬いた。 「――――っ!」  まぶしくて、怯みそうになる。  けれどその輝きに包まれていると、どこか別の場所に引っ張って行かれそうな感覚に陥った。  すばるの星に導かれる。  それはきっと――……。  俺は奇跡を信じて、飛び立ったんだ。  気が付けば俺は、懐かしいあの町に戻ってきていた。  小学生の頃住んでいた町だと確信が持てたのは、その頃入り浸っていた駄菓子屋がどこも変わらないまま目の前にあったからで。  変わってしまったのは、俺たちのほうなのだと気づいたのは、店先にいる一人の女の子が一瞬、見間違えるほどに成長していたから。  いのりだった。  一目見ればわかった。  その時訪れていた小学生たちに駄菓子を受け渡すその表情が、俺にも向けていたものと同じだったから。  懐かしくて、確かめたくなって、俺は持っていた紙飛行機をそっと飛ばした。  紙飛行機は風に乗って、いのりの肩に着地する。気がついて、俺の方を見たいのりは、まるで幽霊でも見たように驚いた後、表情をくしゃっとさせる。 「なっち……?」  涙声で呼んだ俺の名前も何も変わっていない。  それが嬉しくて、俺は笑って答えただけだった。 「ただいま。いのり」  
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