居酒屋 名古屋

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巨大なナナちゃん人形の足元に立ってる人って実はそんなにいなかったりする。 ナナちゃん人形で待ち合わせても、道の脇で待ってる人が多い。 だからこそ、あえてナナちゃんの足元で待っててみようかな。 ナンバーワンにはなれなくても、オンリーワンな存在にはなれるはずだべ。 いや、オンリーワンになれたら、ナンバーワンか。 会社を出るときに、厳重にワキ汗対策をしたからきっと大丈夫。 10月も半ばを過ぎると肌寒くもなってくる。 調子こいてスカートはいたりして、やる気に満ち溢れていたかもしれない。 今更ながらに、何やってんだろって思った。 スニーカーじゃないから全力疾走もできないべ。 行きかう人の足取りが軽く感じられるのは金曜日の夕方っていう解放感に違いない。 男女のペアが多い気がするのも、週末デートのはじまりってやつだ。 私もそんな風に見えるんだろうか。 違うけど。 お詫びの会だから違うけど、でも、男性と二人きりで飲みに行くって遠い彼方の記憶にしか残ってないから正直、嬉しいぞ。 時間を確認、そろそろ来るかと思ったときに、現れた。 しかも目の前にだ。 「お疲れ様。」 ふんわりと笑った顔を見て、なんか照れた。 「オツカレーライスでっす。」 「ぶっ。」 くだらないことを言っても笑ってくれる。 やばい、この路線で生きてても大丈夫な相手なんてイッシーだけかと思っていたぞ。 「噂のお店に案内してよ。僕、詳しくないんだよね。」 見上げた顔を見て、じっくりと検分してしまった。 アフロ頭じゃないスーツ姿の藤木は、普通にいい男に見えたから。 「はははっ、じゃぁ、早速ご案内させていただきます、ご主人様。」 「ぶっ、今度はメイドさんなんだ。なんか変な気分だな。」 舞い上がって、おかしくなってる自覚はある。 だけど、それさえもふんわりと温かく包み込むような藤木の笑顔が胸に染みるというか、体表を覆った感じがした。 昔、使った言葉で言うなら バリヤー。
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