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今日はお詫びの会だから、断固として私が払うつもりだった。
そして、私が全額お支払。
といっても安いけど。
いい気分で地下街をふらふらと駅まで歩く。
「ほら、ふらついてるぞ。」
そう言って、藤木が私の右手を握った。
ドキドキすんべ。
これって、どういうことだろうか。
そういうことでいいんだべか?
いやいや、藤木は深イイ仲にならないと秘密の性癖を教えないらしいから、私と藤木は健全なお友達のはずだべ。
つまり、非常に馬が合うお友達ポジションゲットだぜ~な感じだ。
「へへへ。千鳥足ってどんな歩き方かやってみようよ。こんなんか?」
藤木に右手を握られつつもフラフラとしてみたら藤木が吹いた。
「それは千鳥足じゃなくてへっぴり腰だな。多分、こんな感じじゃない?」
今度は藤木がフラフラするけれども、なんか違う。
藤木もへっぴり腰で私も吹いた。
「二人とも下手だな。これじゃぁ、役者にはなれないってことだな。」
「目指してないでしょ。」
笑って言う藤木の顔を見つつ、私も笑う。
藤木のすべてがふんわりと温かく感じるのは、優しくて強い人だからに違いない。
一長一短で作り上げられるようなもんではないべ。
今は、この右手の温もりだけで満足できても、いつか満足できなくなったら、二人の関係は終わるんだべ。
温かな右手だけで、藤木が与えてくれる分だけで大人しく満足してろよ。
自分に言い聞かせつつ、千鳥足の練習をしてみた。
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