3465人が本棚に入れています
本棚に追加
「藤木君、最近、いいことあったでしょう。」
同じ島で働いてるから、弁当男子の日は同じチームの弁当派の人とそれなりに話をするけれども、澤田さんの唐突な一言に一瞬ギクっとした。
「えっと、何がですか?」
「ふん、俺の目を誤魔化せると思うなよ。私生活に決まってんだろ。」
ふふんと鼻を鳴らしたかと思うと、にやっと笑い、心の奥底まで見透かすような、俺は分かってるんだぞっという目を僕に向けてくる。
「私生活が充実してると、仕事も調子が良いんだよ。俺様の可愛い3バカトリオの全員が最近調子がいいし、さてはお前ら海外の山岸君との合コンで彼女でもできたか?」
俺様の可愛い3バカトリオはもちろん、僕と山根君と新藤君を指すのだけれども、海外の山岸さんを山岸君呼ばわりなのも澤田さんだからだけれども、合コンに行った話なんか誰がしたんだよって思いながら新藤君を見た。
「僕じゃないですよ。多分、山岸さんですよ。」
僕の視線に気が付いた新藤君が首を振る。
いや、いいけどね。
誰が澤田さんに話したんだとしても疾しいことなんて一つもないし、澤田さんが僕たちの様子に気が付いてないわけがないんだからいいんだけどね。
「ふーん、そっか、あてずっぽうも言ってみるもんだな♪私生活が充実してると仕事に良い影響を与えるのは絶対だからな。このままどっちも突っ走れよ。次の四半期決算も俺達のチームが1位で突っ走るからなっ。ガンガン出張入れてやるからな。」
ご機嫌な様子の澤田さんは、仕事の鬼だ。
かなりの仕事の鬼だ。
僕は、あの人の集中力とエネルギーを眩しく思う。
そして、仕事をしていないときとの落差の激しさにときどき眩暈がする。
特に、終業後に奥様に電話をかける姿をたまたま見かけたときなんか・・・同一人物とは思えれないくらいにデレデレした顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!