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ふわふわとした気持ちで、逸る思いを抑えきれずに、浮足立って着替えて待ち合わせ場所に。
いつも、私の方が先に着いてるから今日もきっとそうだと思ったけれども人でごった返す金時計に藤木がいた。
沢山の待ち合わせの人の中で、前のように目立つ頭と言うわけでもないのに、金時計前の人ごみを見た瞬間に藤木が目に飛び込んできた。
これは、もう、自分の気持ちを否定しようもない。
小鳥遊さんの言葉の通り、気持ちが温まってるし、この気持ちがどんどんと成長したらきっといつの日にか溢れだすに違いねーべ。
そのとき、二人の関係はどうなるんだろうか。
「オツカレーライスっす。」
藤木の前までやってきたら、ふんわりと笑って先週私が言った挨拶をしてくる。
「ははっ。お疲れ様です。」
照れてしまうのは、どうしてだろう。
一週間ぶりに見る藤木のスーツ姿は相変わらず素敵男子に見える。
アンジーが藤木の髪型に魔法でもかけたのかもしれない。
「ほら、行こう。」
温かな笑顔を浮かべて、私の背中をトンっと押して出発を告げた藤木の隣を歩く。
ただの皮膚接触と言うか、背中だぞ。
そこまで意識するようなことじゃねーべ。
この前なんて、酔っ払って、手、繋いだじゃないか。
酔っ払いだったから、世話してくれただけだったとしても。
藤木が向かう先はどうやら駅裏方面らしい。
そうか、そっちか。
お店には詳しくないから、どんなところに連れて行ってくれるのか期待で胸が膨らむ。
「女の子を連れて行くのにコスパの良い店って、ナシだったかな。」
歩きながら、しまったなぁなんて顔をする藤木に抱いた気持ちはなんだろう。
女の子だと思ってくれてるんだねって言う高揚感からくるものなのか。
男の沽券ってやつですかって言うひねくれた感情なのか。
「サラリーマン御用達のお店でコスパが悪い店はないんじゃないかな。」
「あぁ、そうだね。」
また無邪気に笑う。
その笑顔は罪作りだべ。
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