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会話のない私と藤木。
嵐が去ってしまったら、静かだ。
店内に流れる演歌がやけに大きく聞こえる。
先に沈黙を破ったのは藤木だった。
「来週、広島に行ってくるよ。」
ここへ来る途中で出張の話をしていたから、それが出張だとすぐにピンときた。
「そうなんだ。広島って、高校の修学旅行で行って以来、行ったことがない。」
藤木の空気が和らいで、笑いながら
「平和記念公園で原爆ドームをバックに記念撮影させられなかった?」
そう聞かれて、あぁ、そう言えばそうだったなと思った。
「させられた。クラスメイトが一人多くなってたりしてって期待したけど、そんなことはなかったな。」
「ぶっ。同じこと、考えたんだ。」
笑う藤木の体が揺れる。
その振動が小さく伝わってくるのが嬉しい。
向かい合わせで顔を見ながら話すのもいいけれども、隣同士も悪くない。
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