3465人が本棚に入れています
本棚に追加
藤木に連れられて行ったお店の名前は
『お好み焼き かりん』
と、のれんに書いてあった。
「神様がせんずをお好み焼きに入れてくれたら、元気になれそうだな。」
「ぶっ、そうだね。」
藤木が相手だとイッシーが隣にいるときみたいに、くだらないことをついつい言ってしまう。
イッシーが相手のときは、そのくだらない会話が盛り上がることが多いけれども、藤木の場合は盛り上がらない。
盛り上がらないかわりに、笑って包み込まれる気がする。
どちらにしても、居心地がいいのだ。
案内されたテーブル席に座ったらメニューを見もせずに藤木が注文開始。
いつかのアンジーみたいだ。
ネギマと焼き鳥と焼きそばとかりんスペシャル2人前に生中を注文して
「ベス、何か飲みなよ。」
と促された。
「じゃぁ、こどもビール下さい。」
メニューに載ってるこどもビールが気になって注文してみたら藤木が笑った。
「それ、アルコール入ってないじゃん。」
「いいじゃん。」
いつもいつも酔っ払ってるわけじゃない。
それに、アルコールが入っていなくても、名前がこどもビールなんてふざけた飲み物でも、酔っ払ったときと同じくらいには気分が良くなれると思う。
出張中の話を聞くというたわいもない会話を続け、話をふられれば私も会社の話をして待っていたら届けられた生中とこどもビール。
「「乾杯」」
とお互いに言い合い、一口飲んで笑い合った。
私は子供ビールの味に、藤木はこどもビールを飲む私を見て笑ったのだと思う。
「どんな味?」
聞かれて困ったから藤木にこどもビールを注いだグラスを渡す。
替わりに藤木からは生中がやってきて、お互いに飲んだ。
今度はこどもビールを飲んだ藤木がその味に笑って、その顔を見て私が笑った。
「本物そっくりの見た目なのに味、ジュースじゃん。」
藤木の感想、私と一緒。
「作った人はすごいよね、見た目が本物そっくりだしさ。」
そうこうしていたら、届けられたかりんスペシャルとネギマとやきとりと焼きそば。
最初のコメントを投稿しよう!