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おおきなどんぶりの中にかりんスペシャルの材料が入っている。
そこにドロドロのタネをいれて、グルグルと掻きまわしてお好み焼きの素を作るようだ。
藤木を見つつ、同じようにかき回しだしたけれども、こういうのがあるとついついバカなことをしたくなるサガ。
どんどんスピードアップしていく私の右手。
気が付いた藤木が吹きだした。
そして藤木の右手もスピードアップ。
学生時代を思い出すようなノリで遊んでくれる藤木の存在がたまらなく愛しい。
恋愛感情でいう愛しいではなくて・・・人としてたまらなく愛しいと思った。
いい加減、混ぜすぎなくらいに混ざったお好み焼きの素を置いて、藤木が慣れた手つきで鉄板に油をひいた。
慣れてるなぁと感心して見ていたら
「何?おかしい?」
と、聞かれてしまった。
「おかしくないよ。お好み焼きってお店で食べるの実は初めてだったりしてさ。」
「えぇっ!?本当に?」
驚く藤木の顔を見て、こっちが驚く。
「家では食べるけどね。」
「じゃあ、乾杯し直さないと。ベスの初体験、いただきましたってね。」
ふふっと笑った顔を見て
「酔っ払ってるのか、ばかもの。」
と言ってやったら、また笑った。
藤木の真似をして、鉄板にお好み焼きの素を丸く広げた。
家で作るときと要領は一緒なんだろうけど、でっかい鉄板で、テレビでお好み焼き屋が映ったときに使っていた専用のフライ返しみたいな道具があったりして、お好み焼き屋の雰囲気にテンションがあがる。
「ベスの家はお好み焼きをするとき、具は何を入れるの?」
こどもビールを飲みつつ、
「キャベツにネギに豚肉とタマゴは基本だな。あとは、小エビとちくわとチーズもいれると美味しいしイカもいるな。そんな感じ。」
「へー。今度、一緒にやろうよ。お好み焼き。」
今、作ってるべ。
今の話の流れからすると、藤木のお宅に誘われてるのか?
「お好み焼き奉行の仰せのままに。」
「僕、奉行じゃないよ。」
「私より、藤木の方が奉行が似合う。スーツだし。」
「本物の奉行はスーツじゃないって。」
「いや、仕事のための一張羅って意味だって。」
こうして続く会話によって、多分、藤木の家にお好み焼きをそのうちしに行くことが決定したっぽい。
なんでもない風を装いつつ、内心、バクバクだべ。
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