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「い、い、いつ結婚すんだべか?」
心の中の動揺が言葉の端々に現れる。
山根の童貞なんかよりも、こっちの方に食いついてる自覚がある。
複雑な心境を感じるけれども、そんなことよりもまずは言うことがあった。
「待った、待った、待った、そんなことより、言うべきことを忘れてた。イッシー、おめでとう!!!」
どんどんと向かい合わせのテーブルの上で身を乗り出して、イッシーに近付いてく私のオデコをパチンと平手で打って
「ありがと。」
ふわっと笑った顔を見て、ヤラレタと思った。
いつもの、口元に下品な笑いを浮かべる顔と別物だ。
この前の新藤さんと同じように、幸せな人の顔だ。
ふと、会社の小鳥遊さんの言っていた言葉を思い出した。
「出会ってから付き合うまでが短いのが大人の恋愛のセオリーだけど、付き合ってから結婚までも大人になると短いんかなぁ。」
「二十代後半から三十代になると、タイムリミットもあるからね。そこらへんは、考えるのかもしれない。あっちも。」
そっか、そうだよなぁ。
タイムリミットか。
確かに、いつまでも楽しくやっていられるのも今のうちってか。
結婚となったら、次は子供も考えるだろうし、そうなるとタイムリミットか。
四十代で生むって身の周りではほとんど聞かないしな。
目の前で余裕の微笑みでこっちを見てくるイッシーに、置いてかれた気持ちになった。
イッシーの幸せも、嬉しいのに。
前みたいに、地に足をつけてないようなおかしなヤツが相手じゃなくて、ちゃんとした人だって分かってるから喜んであげたいし、喜ぶ気持ちもあるのに、複雑な感じだべ。
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