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「明日、紅葉狩りに行こうって誘おうと思って待ってた。会えなかったら電話するつもりだったよ。」
並んで、階段を降りてホームに向かいながら、あぁ、一昨日の紅葉狩りの約束ねと冷静に思う気持ちがすっと通り過ぎた後、デートだべっと高揚した。
特急で帰った方が藤木は早いのに、当然のように私と一緒に急行待ちの列に並んでる。
「紅葉狩りってどこに行くの?」
「香嵐渓とかどう?」
「あぁ、香嵐渓ね。時期だし、土曜日だし混みそうだね。」
「じゃぁ明日は僕の家でお好み焼き食べて泊まってって明後日の早朝に香嵐渓に出発する?」
あぁ、なるほど~なんて一瞬思いそうになったけど、今の藤木の提案ってさ。
泊まるって言ったべか?
思わず、隣の藤木を見上げたら、にこにこしながら笑ってるべ。
ここは、そうだねと言っておくべきか?
だって、私と藤木の関係ってさ・・・。
曖昧だべ?
「ええと・・・お泊りに誘われましたかね、今。」
「誘ったね、確かに。」
神妙な顔をして頷いてるし。
「ええと・・・それってどういう意味合いが・・・。」
「そういう意味合いがあったらマズイ?」
ごくりと生唾を飲み込んだ。
電車が来てしまって、扉が開いて人の流れに乗って中に乗り込んで、車両の奥まで行かされてしまって吊り革をつかまるしかなくなって。
どうしようかなと思ったら、私の手を掴んだ藤木が吊り革に掴まらせてきた。
臭いが気になるんだべ。
上着の外までは臭ってないとは思うけど。
「大丈夫だって、バカだね。」
バカだねと笑われても、気になるものは気になるんだから仕方ねーべ。
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