頑張れ 藤木

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「で、絵里ちゃんの返事を聞いてないんだけど。」 電車が名古屋駅を発車して、地下から地上にと出たあたりで藤木に返事を催促される。 さっきの返事だべ。 いや、曖昧な関係に終止符を打って、もっと仲良くなるのは分かるけど、私のワッキーは強烈だべ。 ごくりと生唾を飲みこんだら、さらに畳みかけるように藤木が言葉を連ねる。 「僕もさ、絵里ちゃんに秘密を打ち明ける気になったんだよね。」 また、ごくりと生唾を飲み込んだ。 藤木がグイグイきてる現状がいつもと違う。 「それって・・・そういう意味ですかね?」 電車が金山駅に到着して、さらに人が乗ってくる。 そして、発車する。 電車の揺れに合わせて吊り革も揺れるし、それに呼応して私と藤木も電車のリズムで揺れている。 「そう、秘密にしてることがあるのに曖昧なまま仲良くしてるってさ、騙してるみたいだしね。それと山根君の幸せそうな顔とチームリーダーの助言と・・・まぁいろいろきっかけはあるんだけどね。」 山根君の幸せそうな顔と言われれば、私だって昨夜のイッシーの顔を思い出すべ。 「紅葉狩りにドライブデートがてら行って秘密を打ち明けようかと思ったんだけど、絵里ちゃんさえよければお泊りしてもいいよ。僕はどっちでもいいよ。覚悟を決めたからさ。フラれるかもしれないってね。」 清々しいくらいに潔い。 深イイ関係にならないと秘密は打ち明けないと言っていたんだから、これは深イイ関係になることが前提だべ。 おちゃらけてないで真面目に返事をしなければ。 「聞いてみないと分からないけどさ、その秘密について。フルとかフラれるとかは置いておいて、何が起きても人として近くにいるっていう選択肢は残るタイプ?残らないタイプ?」 大人になってから、気の合う友人を作るのは至難の業だべ。 藤木の性癖を受け入れられなかった場合に、友達として仲良くしたいと思うのはアリかナシか。 「それを今、話すのってズルくない?」 「・・・ですかね。明日、決めましょう。何時に駅に行けばいいかな・・・。」 「う~ん、3時くらい?お好み焼きは一緒に作って食べようよ。話はその後ってことで。最後の晩餐にならないことを願ってるよ。」 私も願ってますよ。 受け入れられる程度の性癖であることを・・・。
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