頑張れ 藤木

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いくつかの見知った飲食チェーン店を見て、高速道路のインターらしきものも見て、大きな道から逸れて山道のようなところへ走っていく車。 やらせてくれないと、ここで降ろしてくよ、歩いて帰れば? みたいな展開・・・なわけないか。 藤木だし。 大きな駐車場に、ドームのような屋根のある施設。 って言うか、何だべ、ここ。 その駐車場の一つに車が停まった。 そのままエンジンも切られ、お互いに無言のままで何となく重たい空気を感じるけれども、私から口を開けるのも多分、違うべ。 ドキドキと自分の心臓の音が聞こえるのは、藤木の秘密がとんでもないものだったらどうしようと思うから。 「あのさ、僕。」 ごくり。 次を待つ私の心境にもなってくれ。 この間はいらねーべ。 10秒ほどの沈黙の後、 「あのね、何て言うか、ブラジャーつけてる男の人なんだよね。」 「はっ?」 聞こえてきた言葉の意味をよく考えもせずに聞き返してしまった。 「だからね、ブラジャーをつけてるのを父親に見つかって勘当されたんだよね。受け入れられなかったみたいで・・・昔の彼女も・・・。」 目をパチパチしても、何も変わらない景色。 自分の手を抓ってみたら多少の痛み。 夢ではない。 「質問、質問していい?」 喉がカラカラに乾いてる。 「ん?あぁ、そうだよね。何でもどうぞ。」 「藤木は、男の人が好きって言うか女の人も好きってことじゃないの?」 「はっ?」 アレ? 私がこの前からずっと藤木について考えていたこととは全然違うってことか??? 「男の人も女の人も好きな人ですよね?藤木。」 運転席の藤木を見て聞いてみたら、笑われてしまった。 「勘違いだって。女の人が好きだよ。じゃなきゃ、手を繋いだりご飯を食べに行ったりしないでしょ。」 ・・・今、何か重要なことを言った。 「一緒に手を繋いでも嫌がられないし、一緒にご飯を食べに二人で行っても楽しそうにしていたし、ベスは僕のことを悪く思ってないと思っていたよ?間違ってる?」 「間違ってない。」 わざわざ言葉にされると照れるだけで間違ってない。 藤木の顔が見られない。
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