カフェ ユーフラテス

4/15
前へ
/539ページ
次へ
細身のデニムにチェックのシャツ。 それからベージュのこじゃれたジャケット。 ふわっと笑って 「行こうよ。」 と誘われ、花の蜜に吸い寄せられる蜂やアブラムシみたいな気持ちたべ。 藤木はきっと美味しいに違いない。 「ちなみに、ブラはしてるの?」 「ふはっ、何でそんなに気になるのさ。」 楽しそうな声。 「自分にないモノを持ってる人に惹かれる心理だと思う。」 「ベスもブラしてるよね?ベスにないモノなんかじゃないでしょ。」 階段を降りながら指摘された。 「むむっ。自分の中の男性像の中にはないモノだったから惹かれる。」 言い直してみたら玄関で靴を履き終った藤木が笑って振り返った。 「それ、告白されてるみたいだね。あはは。おいでよ。」 まだ、私は靴を履いてない。 でも、伸ばされた藤木の両腕におさまった。 藤木の胸元に頬を寄せて、藤木のジャケットの下に手をまわして抱きついた。 藤木の心地よい心臓の音を聞きながら、藤木の背中にまわる右手を動かせばブラの存在に気が付いた。 なんだ、ブラ、してるんじゃん、やっぱり。 楽しくなって一人で笑っていたつもりなのに。 「笑うことないじゃん。」 藤木の笑い声が降ってきて吹きだした。 「靴、履けないから退いてケロ。」 「履かせてあげましょうか?」 「やめてやめて。足から酸っぱい臭いが漂ってるとか思われたら嫌だから退いて。」 「ぶはっ。」 吹きだした藤木が玄関を開けて物置スペースに退いてくれた。 まだ、顔が笑ってる。 藤木の笑った顔が好きだと思う。 楽しそうな顔。
/539ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3465人が本棚に入れています
本棚に追加