カフェ ユーフラテス

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「ほら、早く。」 靴を履き終えた私の手を引いて、その手を繋ぎ直した。 それから玄関の鍵をして、二人で並んで歩く。 良く考えたら、こうして素面の状態で手を繋いで歩いてるって新鮮だべ。 酔っ払ってるときに手を繋いだことは、ある。 でも、完全に素面だべ。 ドキドキしてると思う。 手を繋ぐよりも先に体を繋いでしまったことがふと頭の中に出てきて頭を振ってその考えを追いだした。 きっと、藤木は大丈夫に違いない。 「どうしたの?」 あっ・・・。 見られていたのか。 不審な行動だったべ、きっと。 「いや、なんでもないです。」 「そう?」 納得してない顔だけど、いい。 ダメ男を卒業したと思いたい。 藤木はきっと大丈夫だ。 今までの男とは明らかに違うべ。 過去の男にブラ男はいなかったからな。 「昨日のコンビニよりももう少し先にカフェがあるんだよ。」 「そっか、カフェなんてこじゃれたとこに行くんだね。」 「たまにね。親戚の店なんだ。」 「へぇ。」 いい天気だ。 秋空。 空が高いべ。 空気が澄んでるのかな。 「そう言えば、今日って日曜日だ。ワキ休み?」 「いや、普通に塗り塗りしたよ。臭ったら嫌だからね。」 「ちょっとぐらい平気なのに。」 ふふっと笑う藤木が憎いべ。 「エチケットだから。」 「へぇ。僕と二人のときはしなくていいよ。」 ・・・キュンときたべ。 ワッキーの臭い、平気なんだろうか。 「いや、でも、夏とか普通に自分で嫌になるくらい臭いがキツイし。」 「でも、絵里の匂いでしょ。嗅いでみたい。」 ウホッ。 名前、呼ばれたべ。 いや、そこもだけど、嗅いでみたいって。 「やばいって、本当に鼻がおかしくなるって。」 「ふはっ。いいじゃん。思いっきりくっせーって言って笑ってあげるから、二人のときはいいじゃん。」 恥ずかしいのに、臭いを嗅がれてその臭いについて指摘されるってものすごく恥ずかしいのに、今の藤木の提案にはなぜか心が躍った。
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