藤木浩二の独り言 パート3

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「大きな家がいっぱいだね。ほら、この家とかさぁ。」 ベスが指差しているお宅は確かに大きい。 昔からここいらに住んでる人のお宅だし・・・。 僕の実家もここのお宅と同じくらいの敷地があるって言ったら、どんな顔をするんだろう。 本宅と兄夫婦の住む別宅。 僕は関係ないけれども、僕の実家であることには変わりがないし。 あっちのお宅、こっちのお宅とキョロキョロしながら歩くベス。 君は今、いったい何を考えているんだろう。 「ねぇ、ねぇ、玄関が二つある家もけっこうあるねー。やっぱり二世帯も多いんだね。うちの近所も増えてきてるし。」 なるほど。 そういうところを見ていたのか。 「あっ、公園があるよっ。行こう行こう。」 次は公園を発見したらしい。 行こう行こうってさ、子供じゃないんだから。 そう思って、笑ったけれども、彼女は強く僕の手を引っ張っていく。 僕の家の近所の公園。 ブランコとシーソーと砂場と滑り台と鉄棒。 それと広場にベンチ。 夕方になってしまったから人もいない。 寒いし、日も短いし。 こんな時間から公園に来る人なんていないに決まってる。 ベスを除いては・・・。 僕の手を離したベスが小走りにブランコに吸い寄せられていく。 そして、そのまま立ち漕ぎ開始だ。 「コージー、競争しようよっ!!!どっちが遠くまで飛べるか!!!」 遠くまで飛ぶって・・・。 普通はどっちがビュンビュンと漕げるかでしょ。 そう思ったのに、あまりにも楽しそうにブランコをしてるものだから僕もベスの隣のブランコに乗って漕ぎだした。 いつ以来だろう。 ずいぶん、ブランコになんて乗ってない。 久しぶりなのに、昔と同じように漕げる。 いや、昔と同じように漕いだらけっこう怖いんだけど。 これって、昔よりも自分の背が高くなって視点が変わったからだよね。 と言うことは、今の背の高さになる前にブランコからは卒業してたってわけだ。 「よっし、いざ、勝負っ!!!」 勢いよくベスがブランコから飛び立って空中を華麗に舞った様子に見とれた。 大きく背を逸らせて、走り幅跳びのオリンピック選手みたいにキレイに空中を舞ったから。 自分から言いだしただけある。 けっこうな距離だ。
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