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「コンビニに寄っておでん買って帰ろうよー。」
いいことを思いついたという顔をして、そのまま僕の方を見上げてからの今の言葉。
「そんなんでいいの?」
どこかに食べに行くんでも、家でもうちょっと良さそうな物を作って食べるんでもいいのに。
そんな気持ちから出た僕の言葉に。
「そんなんでってご馳走じゃん。味の染みたコンビニのおでんを彼氏と買って帰ってコタツでつつくってなんかいいじゃん。」
やばっ。
笑った口から覗いた歯と少し垂れた目。
決して美人でもとんでもなく可愛い子とかでもないけど、今の顔とベスの口から出てきた『彼氏』の言葉に、ドクンと自分の体が衝撃を受けたのを感じた。
今日は襲わないはずだけど、大丈夫かな。
また、自分の腕の中で鳴かせたいかも。
変態絶倫野郎って言われるから我慢しないとなぁ。
「コージーは嫌なの?」
ベスの顔を見たまま、返事をするのを忘れていたら彼女の瞳が揺れた気がする。
「嫌じゃないよ。」
「やった。今夜は豪華に全種類制覇しよう!!!」
「ふはっ。全種類制覇って。」
「いいじゃん。お腹が空いてきたー。」
夕暮れ時、空気は冷たく吐く息は白い。
繋いだ彼女の手だって少し冷たかったけれども、嬉しそうにおでんの具について話す彼女は元気いっぱいだ。
やっぱり、何もかもが眩しく見える。
「おでんを持ってたら走れないね。よし、競争だっ。」
コンビニが見えてきたところで、僕の手を振りほどいて走り出した彼女。
一瞬にして、手から温もりが消えてしまった。
ふっと笑って、一拍遅れで彼女の手を掴まえに追いかけた。
逃げられると思うなよ。
大人なのに、子供のように元気に走りまわる彼女のエネルギッシュな姿が眩しくて堪らない。
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