コンビニ おでん

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午後からのパフェを食べながら、いろいろなことを話すという目的が、夕飯のおでんをつつきながら話すことで叶った。 藤木の家族構成、小さい頃の話。 実は、自宅がけっこう大きなお宅なのかもしれないこと。 お父様はそんなに頑固な人でもないけれども、藤木のブラについてはショックが大きかったのかもしれないこと。 お母様もショックを受けていたんだろうこと。 年末年始とお盆には、一応、実家に立ち寄ってお母様に会ってるけれども、お父様には会っていないこと。 少し淋しそうな顔をしながら 「僕がブラを止めればいいのかもしれないけどさ、なんか悔しいじゃん。止めろって言われて止めるとかってさ。」 そう言った。 タマゴを食べながら。 藤木の口から紡がれる言葉の端々に家族への思いを感じて、父親への憤りのようなものも感じた。 「もしも、これが兄貴だったらどうしたんだろうって気持ちもちょっとあるんだよ。兄貴は長男でしょ。勘当なんてしなかったんじゃないかなってさ。ひねくれた気持ちになったりとか。」 相槌を打ちながら、いつもふわっと笑う藤木の言葉じゃないみたいで新鮮だなとやけに冷静に眺めてる自分がいた。 私の視線に気が付いて、はっとした顔をした後に肩を竦めて 「ごめん、なんかつまらないことばかり話してたね。」 と言った藤木。 「いやいや、いっぱい詰まってたよ。」 こんにゃくにかぶりつきながら、たくさん詰まっていた話を思い出していた。 「詰まってたって、あんまり聞かないよね。」 藤木が笑った。 「はははっ。学生の頃に新藤さんが言ってたのをこれは使えると思って使ってる。つまらなくてごめんって言われたら、詰まってるよって答えることにしてる。」 私の説明に藤木がまた笑った。 「新藤君のお姉さんはエリーにずいぶんと影響を与えたみたいだね。」 「そうだね、サークル棟の屋上から絶叫するとか、酔っ払っておかしなことをするとか。あの人、普段は普通におかしいだけなんだけど、酔っ払うと全力でおかしくって。そのうち、新藤さん伝説をコージーにもたくさん教えてあげるよ。」 「あははっ。新藤君とのギャップが凄そう。」 爽やかな笑顔を見せる藤木。 そうか、新藤君は藤木の会社の後輩だったべ。
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