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「ノー残デ―だからさ。」
藤木の放った言葉の意味はノー残業デーだろう。
「そっか。私は毎日定時だよ。」
一瞬、頭の中に山田さんと小鳥遊さんが笑った顔が浮かんだ。
彼らも毎日定時あがりだ。
「そっか、一緒に帰ろうと思って待ってたんだよね。行こう。」
くすぐったいべ。
なんだ、これ。
中高生の頃、彼氏彼女がいる人が帰る方向も違うのに一緒に帰っていく姿を見て一人妄想を膨らませて悶えていたことを思い出したべ。
たまらんっ!!!
頭の中で、あの頃の妄想を引き出そうとしていたら藤木の笑い声とともに手を繋がれた。
ウホッ。
たまらんべ。
ウィークデーに手を繋いで駅の改札&ホーム。
仕事帰りに手を繋いで一緒に帰る。
同じ会社でもないのに。
大人の青春だべ。
いや、遅くやって来た青春だべ。
叫びたいっ!!!
「なんか、楽しいなぁ。」
藤木がほわっと言った言葉を聞いたべか?
そうだ、なんか楽しいべっ。
ダメだ、叫ぶっていう欲求を押さえつけたんだから、これぐらいはしてもいいはずだべ。
繋いだ手を解いて、藤木のスーツの背中に手を伸ばす。
スーツの上からでも確認できるのだろうか、ブラっ!!!
まさに、階段を降りている最中の一幕。
「わっ、わわわっ。」
焦った声を出した藤木に胸キュンだ。
可愛い。
ニヤニヤした。
叫んでないけど、かなり満足度が高い。
変態と言われても否定はしない。
「エリー、やめてよ。」
一瞬しかやってない。
そしてすぐに手を繋ぎ直した。
「エネルギー補給させてもらった。これで週末までまた頑張れそう。」
にんまりだ。
対する藤木は飽きれ顔。
「覚えておきなよ、週末。」
ニヤッと笑った藤木の顔を見て、一瞬背筋がゾクリとした。
嫌ではない。
だけど、追われると逃げたくなる心理みたいなものだ。
覚悟しろっていわれると、ドキドキするべ。
「忘れます。恐ろしいことを言うなら、週末の約束も忘れま・・・せん。やっぱり会いたいです。」
ウソはいけないなと途中で思って言い直したら笑い出した藤木。
「ぶっ、ずるいよ。それはずるい。可愛かった。」
可愛かったと言われて照れるし、本当に可愛いのはそういうことをサラッという藤木だと思った。
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