リベンジ紅葉狩りイブ

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車が住宅街の中に進んで行く。 カフェ ユーフラテス の横を通過し、先週おでんを買ったコンビニを通過し、藤木の住む長屋に到着。 そして、ここに来ること数回を数えているはずなのに、今日、初めて気が付いた。 藤木の住んでるこの長屋は 吉田荘 と言う名前らしい。 小さく長屋の端っこの家の壁にペンキで書いてあったべ。 消えかかっていたし、それが壁に馴染んでて今まで気が付かなかった。 確か、アンジーだかジェームズの親が大家さんだと言っていたような気がする。 吉田さんだから、吉田荘なのかな。 また一つ、藤木に関するパーソナルな情報を知ったような嬉しさ。 人を好きになると、その人の情報が増える度に嬉しくて仕方がない。 私の膝の上に鎮座されていた温かいたこ焼きが運転席側から伸びてきた腕に攫われて行った。 「ほら、行こうよ。」 藤木のマイルドな声が私を誘う。 花の蜜に吸い寄せられる働き蜂な気分で藤木の声に従い車を降りて藤木の背中に続く。 ガラガラと物置スペースを通過して、玄関に。 外から見ると、かなり古い長屋なのに家の中だって古さを感じるのに割とキレイだべ。 すりガラスをガラガラっと開けてコタツの上にたこ焼きの袋を置いて藤木はそのまま台所へ行ってしまった。 私は遠慮なくコタツにイン。 「エリー、何が飲みたい?」 「コージーと同じの。」 「青汁飲む?」 クスクス笑う声が聞こえた。 「飲まない。」 「ぷぷぷっ。じゃぁインスタントコーヒーね。」 青汁が常備してあるのか? それとも、私のリアクションが知りたかったから言ってみただけなのか? どっちにしても、楽しいからいいや。
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