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たこ焼きに、楊枝を指してそのまま食べるのかと思いきや、
「エリー、どうぞ。」
ニコニコしながら、私に食べるようにすすめてくる。
本当は、自分が食べたいから買ったはずなのでは。
疑問に思いつつも、すすめられて食べないはずもなく、
「アムロ、いっきまーす。」
「ぶっ、おバカさん。」
気持ちはカタパルトから飛び立つモビルスーツな感じでたこ焼きに手を伸ばした。
ほんわかと温かさが残ったたこ焼き。
トロトロのソースとしんなりしたかつお節。
それから噛みしめると、タコにぶつかって、その歯ごたえと紅ショウガの刺激的な味わい。
トータルのバランスが良くて美味しいべ。
「まいう~。」
私の感想に満足そうな顔をした後、藤木もたこ焼きを味わって、私と同じような顔で
「まいう~。」
と言って、二人で笑った。
美味しい物は人を笑顔にさせてくれる。
イッシーなんて、美味しくなくても笑ってるべ。
個性的な味で凄いとかって、言いながらゲラゲラ笑って食べるんだ。
好きな人と食べる食べ物は格別だべ。
「ケーキにしようかなって一瞬、思ったんだけどね。駅にエリーを迎えに行く途中で、ケーキって感じじゃないなぁって思い直しておやつはたこ焼きにしたんだ。」
うん、それってどういう意味だべ?
ふんわりと甘いケーキみたいな女の子ではないって意味か?
当たってるだけに、痛いべ。
微妙な気持ちだけど、それを表現する上手い言葉が思い浮かばない。
次のたこ焼きに狙いを定めて、楊枝でグサリとたこ焼きを刺してやった。
「ふふっ、勘違いだよ。おバカさん。」
顔を上げて藤木を見れば、いつもと同じ優しい顔だべ。
おバカさんの言葉にも、愛を感じるべ。
ケーキじゃないと言われて、ざらざらとした心持ちになったはずなのに、あの顔を見るとダメだ。
途端に、何でも許せそうだ。
「ケーキはさ、特別な日にとっておこうって思ったんだよね。たこ焼きは、何でもない日、おめでとうって感じでしょ?」
何でもない日、おめでとうの意味はよく分からないけど、分かったべ。
ケーキは、特別。
確かに、ケーキは特別だ。
うん、納得。
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