3465人が本棚に入れています
本棚に追加
/539ページ
監獄から一人脱獄な気分で自分達の小部屋を出た。
そしてお手洗いに向かいつつ他の入所者達の様子を伺った。
怪しげなビーカーやら試験管の飲み物にイヒヒっと笑いながら、カエルの足におっかなびっくりで齧り付く様子。
いいぞいいぞ。
見てるだけでハイテンションガールになれるぞ。
目的のお手洗いの前には、人が一人椅子に座って待っている。
あぁ、残念。
まぁ、いいや。
膀胱が辛抱堪らんな状態になってるわけじゃないし。
もちろん、けっこうなアルコールを摂取したからお手洗いに行ったら出すものは出すに決まってるけどね。
お手洗い前にご丁寧に椅子が並べられてるところを見ると、ここは待ち時間が出るような場所なんだね。
こそこそっと座らせてもらった。
しっかりと、ワキをしめて。
もしも、しめなかったらお隣の見ず知らずの御嬢さんに不快な思いをさせてしまうかもしれない。
ワッキーの臭いはすかしっ屁と同じくらい微妙かつ迷惑行為だ。
お手洗いに並んで座っていたら、暗がりでもわかる巨大な頭がこっちにやてくる。
藤木だ。
「あっ、けっこう並んでるんだ。・・・隣、いいっすか?」
「・・・どーぞ。近寄らないでね。臭うよ。」
「あー、大丈夫。」
暗がりで笑った顔。
なんか可愛いかもしれない。
頭の大きさとのアンバランスがゆるキャラチックで。
「ベスさんは年、いくつなん?」
うほっ、新藤さんのベスちゃんもかなりキテルと思っていたけど、さらに上をいくベスさん。
「さん、いらねーべ。私も藤木って呼んでるし。」
「あっ、そう?僕、29歳。ベスは?」
・・・マジか―!?
私の正面に座ってたし、きっと私よりも年下かと勝手に解釈してたべー。
「すみません、藤木さん、私の方が年下でした。28歳です。」
「いや、別にいきなりさん付けされるのも変だし、学生の頃みたいで楽しいから藤木でいいよ。」
頭の大きさはおかしいけれども、話すことは普通だな、藤木。
最初のコメントを投稿しよう!