紅葉狩り

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まだ11月の半ばだし、がっつりコートってどうなんだろうという気持ちもあって薄手のコートを羽織ってきていたけれども、外に出てひんやりとした空気を感じて、失敗だったかなと思った。 寒くはない。 藤木だって、いつものジャケットを羽織ってるだけだし。 「寒くない?」 後部座席から荷物を取りだした様子を眺めつつ、ジャケットにデイバッグ。 合わないけど、ちぐはぐな感じもいとおかし。 紅葉もいとおかし。 私の頭もいとおかし。 気分は清少納言だべ。 「寒くないよ。暖かくもないだけで。」 「ふふっ。手を繋げば、手だけは温かいからいいね。」 ふわっと笑った藤木にダメだしだべ。 「手だけじゃないよ。心も温かいから、いとおかしだよ。」 「そっか。うん、いとおかしだね。」 また、すべてを包み込むような笑顔を浮かべて・・・。 あの顔でブラしてて、しかも夜は絶倫。 いや、朝も・・・。 反則だべ。 立駐から香嵐渓までの道を歩いていたら、同じく立駐から現れたナイスミドルのアベックが私と藤木の前を歩いてる。 素敵だべ。 背の高いオジサマが車道側を歩こうとしていた奥様の手を引き 「ほら、轢かれる。」 と歩道側に誘導してるべ。 さっき、藤木の車の中で聞いた藤木の従兄の焦れ焦れ恋物語もそそられたけど、目の前で展開されるラブラブナイスミドルには、もっとそそられる。 「あっ、ありがと。誠二さん。ねぇ、本当にお店、休んじゃってよかったの?」 「たまにはいいだろ。時期もいいし。新婚旅行だって行ってないんだからゆっくりしてこうなっ。」 オジサマの言葉に嬉しそうに笑う奥様。 ウホッ。 まさか、お二人は新婚ですか!? ウホホホホホホッ。 しかも、ナイスミドルのオジサマのお名前、誠二さん。 ダメだ。 ぐははははっ。 蘇る名台詞。 『40秒で支度しな。』 と同じくらいのインパクト!!! 『雫、結婚しようっ!!!』 ウヒョーーーーーーーー!!!。 奥様のお名前は 雫  希望ですっ!!! 耳に全神経を集中して前を歩く二人の話を盗聴。
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