紅葉狩り

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人でごった返す橋の上で川の両脇に植わる紅葉した木を眺める。 鮮やかな黄色と赤色。 目に映る映像は素晴らしく美しいけれども、この喧噪。 よく、橋が落ちないなと思う。 「エリー、そこに立ってて。」 離れてしまった藤木の手。 そして、スマホを構える藤木。 ・・・私を撮るのかね? いいけど・・・。 ささっと撮影を終えたようで、通行人の邪魔にならないように素早く戻ってきた藤木の手元のスマホを覗く。 見せてと言わなくても見せてくれたお写真。 私のバックに真っ赤に染まった木。 モデルがどうであれ、なかなかいい写真に見えた。 「モデル料を取らないとね。高いよ?」 「どれくらい?」 「来週は、私に下着を選ばせて。」 「わっ、こらこらこらこら、TPOを考えて発言してよっ。」 動揺した藤木を見て、笑いつつ手を繋いで歩き出した。 歩きながら、藤木の予習の成果を聞いたべ。 今、渡っているこの橋は待月橋(たいげつきょう)と言う名前の橋で下に流れる川は巴川。 川沿いを上流に向かって歩いていくと、途中に香積寺(こうしゃくじ)と言う名前のお寺があって、そこはたくさんのもみじが植わっている。 さらに川を上流に歩いていくと、吊り橋があるからそこまで行ってみようという話だった。 私と出かけるために、予習をしておいてくれるなんて、嬉しいべ。 私は行き当たりばったりな性格だから予習なんてしてないし。 「さすが、出来るサラリーマンは違うね。」 「ふふっ。僕ってけっこう段取り魔なんだよね。」 ほわっと笑う藤木の顔を見つつ、巴川沿いの道をゆっくりと歩いた。 川沿いの道にも凄い人だけど、それよりも頭上の紅葉が息を飲むほど美しい。 視界がすべて黄色と赤色の光に包まれてるみたいだべ。 紅葉のトンネルの中を歩いてる感じ。 見上げすぎて首が痛くなる。 「上ばっかり見てると危ないよ。」 藤木に言われても、ついつい頭上を見上げて色づく葉を見てしまうべ。 そんなことしなくても、普通に歩いていても視界に紅葉なんて入るんだけど、見上げてしまう。 「もう、エリー、ちゃんと僕に掴まって歩いててね。おバカさんなんだから。」 藤木の声が聞こえたけど、スルーだ。 おバカさんでいいもん。 初めて二人で遠出した記念の景色を目に焼き付けておきたいし。
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