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しばらく歩くと広場に出た。
広場の辺りにはお店も出ていて食べ物も売ってるようだべ。
お猿さんもいる。
猿回しだべ。
「見てく?」
私の目が、竹馬を操るお猿さんに釘づけになってることに気が付いたようで、笑い混じりの声にまたおバカさんって思われてるんだろうなと一瞬思った。
「いや、どっちでもいいよ。」
猿回しを見物してる人達の後ろをゆっくりと進みつつ、最後尾から眺めていたら、また藤木の声。
「おバカさんだね、見たいって言えばいいのに。」
「コージーの下着の方が見たいよ。」
「わっ、もうっ、TPOを考えて言ってよ。」
繋いだ手を引っ張られて、バランスを崩して藤木の方に体がよろけたら、それをやんわりと抱き留めてくれる優しい手。
顔を見上げたらふわっといつもの笑顔が現れた。
「やっと僕のことを見てくれた。紅葉だけならまだしも、あの猿にも負けてた」
あの猿と言って、一瞬、竹馬を乗りこなして拍手を貰ってるお猿さんに視線を向けた後に私に戻ってきた視線。
ちょっと、ドキドキした。
夜明け前からあんなこととかこんなこととかしたはずなのに。
その時にだって、ドキドキしたはずなのに。
もっと、こう、フィジカルではなくメンタルな部分に突撃されるような、そんなドキドキ。
うん、良く分からないべ。
「お猿さんよりもコージーの方がいいから、行こう。」
変なドキドキを味わって、このままここでお猿さんを見てるよりも歩いた方が賢明だと思って、手を引っ張って歩く。
広場に売ってるホットドックの屋台が目に付いた。
美味しそうだべ。
「お猿さんの次はホットドックでしょ。買ってあげるから僕のことも忘れないでね。」
また、笑い混じりの声で言われ、なんだかドキドキさせられてる。
僕のことは忘れてないべ。
僕があった上でのホットドックであり、お猿さんだべ。
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