紅葉狩り

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「この階段を登るの?」 どこまで続くのだろうか、この階段。 そして、この階段の先には藤木が言っていたお寺があるんだよね。 でも、紅葉ならここで見られるべ。 「ほら、行くよ。」 可愛い顔をして手を引っ張られたらついていくしかないようだ。 「コージー、じゃんけんしようか。」 ん? と首を傾けた藤木。 それ、可愛いんだってば。 「じゃんけつポンっ!」 藤木の返事を待たずにじゃんけんの掛け声をかけたら、藤木がパーを出して私がチョキ。 勝ったべ。 「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト。」 5段登って、後ろの藤木を振り返ったら階段の5段下で笑ってる。 「エリー、人の邪魔にならないように端っこに寄らないと。ほら。」 藤木の指摘通りに階段の端っこまで寄って、もう一度じゃんけんをしたら、また私がチョキで勝った。 階段を登ること5段。 10段も下に藤木がいる。 しかも笑ってるべ。 「僕の負けでいいから一緒に登ろうよっ。」 10段下の藤木からの声に少し考える。 閃いたべ。 「いーよ、来週、」 「ワーーーーーーーーー!!!!!」 藤木の盛大なスクリームでかき消された私の声。 いや、言ってないよ。 何も言ってない。 藤木がどんな反応をするのか見たかっただけ。 想像通りというか、想像以上にいい反応をしながら階段を駆け上がってくる姿を見て、腹筋が痛くなるほど笑った。 はぁはぁと息を切らして全速力で登ったようだ。 藤木の叫び声が辺りに響いていたことに本人は気が付いてないんだろうか。 注目の的だったべ。 ふふふっ。 「もうっ。」 ウホホホ。 もうって、可愛いべ。 にんまり。 「家に帰ったら、お仕置きするしかないね。」 「えー、TPOを考えて言ってないからいいじゃん。」 「もうっ。」 怒ったような顔をして、それでも目と口は笑っていて、私と手を繋いだべ。 くすぐったい。
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