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どこまで続くのかと思った階段を登りきると、お寺への参道が現れる。
違うな、階段も参道だったんだべ。
真っ赤に色づくカエデの葉。
落ち葉も赤くて、見る物すべてが赤くなってる。
ほうっ。
息を飲んだ、いや、息を吐いた。
「撮っちゃった。」
藤木の声で我にかえったら、見せられたスマホの画像。
私がポカンと口を開けて、カエデに見とれてる図・・・ちょっとバカっぽい気がするべ。
バカっぽいのは事実だから否定できないか。
嬉しそうな顔をしてる藤木。
こういう姿を見ると、この人、本当に私のことを好きなんだなと思う。
イマイチ、育ち方とか生活レベルとか勤務先で釣り合ってない気がしちゃうのに。
ん?
と小首を傾ける動作をする藤木。
私がその動作を見る度に、可愛いべって思ってることに気が付いてるんじゃないかと思ってしまう。
参道の両脇の真っ赤なカエデ。
落ち葉も一面が赤くて、踏むとカサカサと音をたてる。
「お寺にお参りして来ようよ。」
嬉しそうに私の手を握り直して歩き出した藤木。
モテないわけじゃないよね。
可愛いところ、あるし。
もしも藤木がブラ男じゃなかったら・・・昔付き合っていた彼女と今頃、結婚していたんかなぁ。
ブラ男で良かった・・・。
「コージー。」
「ん?何?」
「僕はブラ男ですって公表しないの?」
「わわわっ、もうっ。」
慌てた様子を見せるけど・・・もしも藤木がブラ男だって公表したら、藤木を狙う輩が減るんじゃないかなって思ったし。
「こっそりしてるところがスリリングで楽しいんだよ。秘密。それに、みんながみんな、エリーみたいな人じゃないしね。」
「ふーん。」
だよね。
うん、分かってたさ。
そういう答えが返ってくるってことくらい。
みんながみんな、そういう人を受け入れてくれるんだったら、もっとオープンブラな男性がいてもおかしくないし、ショッピングセンターにメンズブラ専用の売り場があったっておかしくないし。
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