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階段を降りて、もと来た道までやってきた。
ここを左折して、川沿いの道を上流方面に歩くと藤木の言っていた吊り橋に着くはずだ。
どこまでも続く紅葉。
歌いたくなってくる。
「真っ赤だなー、真っ赤だなー、藤木のお尻が真っ赤だなー。」
「こら、おかしな歌を歌わない。ほんっとうに、もう、おバカさんだなぁ。」
「だって、歌詞忘れたけど歌いたい気分なんだし、いーじゃん。」
「恥ずかしい替え歌は二人だけのときにして。」
二人だけのときね。
ふーん。
頬が緩むべ。
「はーい。替え歌とブラの話は密室でだね。」
「こらっ。」
「ふはははっ。」
誰も、私と藤木の会話なんて聞いてないのに。
藤木の困った顔や、ちょっとだけムッとした顔が見たくてついつい意地悪を言いたくなる。
小学校のときに、好きな女の子に意地悪する男の子がいたけど、まさしくソレだべ。
しかも、好きな男の子である藤木が私を好きだっていう崩れない絶対的な大前提があるんだから、楽しくて楽しくて仕方がない。
困った顔もムッとした顔も可愛い顔も全部独り占めしたいべ。
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