紅葉狩り

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「オフォフォフォフォフォッ。」 「エリーってば、奇声をあげないでよ、あはは。ドキドキした?」 「ドキドキしたし、ムギュムギュした。」 「ムギュムギュって何?ふふふっ。」 「胸がギュっとなったを略してムギュムギュ。」 「あははっ、いいね、それ。僕も今度から使うよ。ムギュムギュ。」 楽しそうな笑い声。 「そして、私も藤木のご神木をムギュムギュしたいって使うね。」 「こらこらこらこら。恥ずかしいことは言わない。」 二人で顔を見合わせてまた笑った。 「まったくぅ、困った子だね。」 溜息を吐きつつも、笑って私の手を握ってくる藤木。 まさしく、今、ムギュムギュしてる。 「でも、僕も困った人かもね。早く二人きりになりたくなってきちゃった。」 ウホッ。 今、爽やかに、けれども、非常に重要なことを言ったべ。 「帰る?それから、ご神木をムギュムギュする?」 「ぶはっ、直接的なのか間接的なのか分からないね。主導権はエリーじゃなくて僕だからね。」 私の耳元で囁かれて、また私はムギュムギュしたべっ。 頬と頬が触れたことにも、ムギュムギュしたし、耳元で囁かれた声と息遣いがダイレクトに伝わったことにもムギュムギュした。 顔が離れた後、私の顔を覗き込むいたずらっぽい藤木の顔。 笑ってる目と、にやついた口元。 だけど、そこに厭らしさは微塵もない。 「ほら、行こう。僕の理性のあるうちにねっ。」 おせおせなのは、私の方だと思っていたのに、どうやらどこかで藤木のスイッチが入ってしまったらしい。 お手柔らかに・・・。 いや、理性が崩壊してもそれはそれで素敵かも・・・。 そんなこんなで香嵐渓を後にした。
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