コージー特製お茶漬け

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おバカさんと言いながらも、藤木が私を抱き締めて緩く拘束してくる。 私は藤木を見上げて、藤木が私を見下ろしている。 寒い台所の昔ながらのステンレスの流し台の前でだ。 キレイに片付けられた食器は小さな昭和を感じさせる食器棚の中に収納されて、流し台についたであろう水滴は家庭科の調理実習の後のように拭われてどこにもその痕がない。 藤木はけっこう几帳面だ。 下着だって、キレイに収納されていたし・・・。 「早く送っていかないといけないって分かってるんだけど、このままでいたいって思ったりする複雑な心境。明日も休みだったらいいのにね。」 残念そうな顔でそう言って、私のオデコにキスをした。 それから、ふっと笑って 「やっぱこっちの方がいい。」 と言って、唇にキスをした。 ムギュムギュし過ぎてたまらんべっ。 落ち着け、落ち着け。 ちょっとだけにしておけよ。 私の中のもう一人の私がちょっとだけならいいだろうとゴーサインを出したのを確認して、抱き締められてる藤木の胸元に顔を擦りつけた。 思いっきり。 そして、右と左に顔を動かしてグリグリしてみたべ。 あぁ、ドリルになって藤木の体に穴をあけて自分の顔を埋め込みたいぐらい好きだべ。 できることなら、藤木と一体化して毎日を過ごしたい。 顔から上を挿げ替えたら、いつも藤木の体と一緒にいられる。 もしくは、私の体と藤木の顔がいつも一緒にいられる。 叫んでいいべか? こんなに好きだと叫んでいいべか? いや、叫んだら迷惑だべ。 藤木の胸に口をみっちりと押さえつけてから。 「ブォーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 くぐもった声だけど、叫んで少しだけスッキリだ。 「ふっ、何で叫ぶのさっ。」 上から声がふってきた。 笑った顔に笑った声。 「叫びたいぐらい、コージーが好きだから。」 「ぶはっ。僕も叫んだ方がいいね、それなら。」 藤木の言葉が新鮮だったべ。 今まで、私が叫んだことはあっても、藤木が叫んだことはないべ。 「でも、僕はエリーみたいにできないから、ギュッと抱き締めてお終いかな。」 藤木の体が楽しそうに揺れた後、宣言通りにギュッと抱き締められた。 本当に、永遠にこのままにしといてくれたらいいのに。 時間を止める魔法、新藤さんだったら知ってるかな。
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