ホウレンソウを怠るな

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月曜日の夕方でも、名古屋駅の待ち合わせのメッカ、金時計周辺は混んでるらしい。 イッシーがやってきたらすぐに分かるはず。 イッシーは横にはでかくないけど、縦にでかいのっぽさんだからな。 待つこと数分。 いつもよりもイッシーが大きく見えるのは、きっとヤツが幸せオーラを発してるからに違いないからだべ。 すぐ近くまでやってきたイッシーに手を振って合図する。 「石ちゃん、こっち、こっち!!!」 私を一瞥して、いつものように石ちゃんって呼ぶなと言ってくるだろうと思っていたのに、白い目を向けてくるだけだったべ。 なんか気持ち悪い。 そして、マジマジとイッシーを見上げた。 イッシーがいつもよりも巨大に見えていたのは気のせいではなかったようだ。 ヒールのパンプスで175センチオーバー確実な勢いだべ。 「お疲れ、珍しいね。」 イッシーの顔を見た後で目線を下にしてパンプスを見て、もう一度イッシーの顔に視線を向けた。 口元に下品な笑み。 そう、この顔がイッシーだべ。 「可愛いパンプスだろっ。サイズがあったから買った。純ちゃんも可愛いって言ってくれたし。」 誰だよ、純ちゃん。 「ふーん、友達?同僚?誰?純ちゃん。」 「山根。」 「ぶはっ。純一?純二?純三?本名ってなんて言うんだべ?」 「純一。」 「ぶはっ。ウケた。悪い悪い、名前だけで笑いを取れるなんて山根すげーべ。」 話しながら歩きだしたけれども、山根の本名なんて、一番最初に聞いたっけ?いや聞いてないっけ? みたいな感じだしな。 「名前だけで笑うトミーはひどいヤツだな。」 さっき、私がイッシーを石ちゃんって言った報復のようにベスではなくトミーよばわりしてくるってか。 ふと、会社の山田さんと小鳥遊さんを思い出して笑ってしまったべ。 「いつもなら怒るとこなのに、笑うって何かいいことでもあったのか?」 いつものようにスタバに向かうために巨大エレベーター前でたたずみつつ、イッシーの質問への答えを探す。 「会社の人にトミーって呼ばれてるからさ。」 「ぶっ。トミーって。くくくっ。」 口元だけでなく、顔全体が下品な感じになるイッシーを見て、私も笑った。
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