ホウレンソウを怠るな

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小太りのおばちゃんがお冷と手拭を持って来てくれて、その場でみんなが注文した。 「ロース味噌カツ定食下さい」 「カキフライ定食下さい」 「天ぷら定食下さい」 「唐揚げ定食下さい」 見事なまでにバラバラの注文。 「やっぱり仕事の後はガッツリ揚げもんだよなっ。」 バラバラの注文だと思ったけれども、そこは揚げ物というカテゴリーの中だったらしく澤田さんはみんなが同じ注文をしたとチーム内の意思の疎通がとれてるかのようにご機嫌だ。 熱い熱い澤田さんの隣に僕。 僕の前には山根君。 澤田さんの前には新藤君。 「そう言えば、このお店で新藤君のお姉さんとその彼氏さんに会ったよ。」 なんとなく、会話をした方がいい気がして話してみたら新藤君が笑った。 「あー、なんか納得です。オシャレなお店が似合わない感じが。」 僕と新藤君の話に澤田さんがのってきた。 なんで、僕が新藤君のお姉さんと知り合いかって話だ。 それで、9月の飲み会の話になり、山根君が彼女を作った話になりその彼女にプロポーズした話まで。 「はっ?山根さん、そんなことになってるんですか?知らなかったなぁ。えぇっ?だって、えぇっ?」 新藤君が驚いてる。 だよね、僕だって驚いたんだから。 「そんなこと言うけど、藤木君もベスと付き合ってるんやで~。」 まったりとしたいつもの山根君の話し方で新藤君に僕とエリーの付き合いをバラされ、また新藤君が驚いてる。 いや、いいんだけど。 「そういう新藤君だって、だれだっけ、ウっちゃんと仲良く話してたやろ~。」 山根君のゆったりした独特の話し方でスルーするところだったけれども。 「山根さん、ウっちゃんじゃなくて、ナンちゃんですってば。姉貴と同じ間違いしないで下さいよ。」 そうそう、ウっちゃんじゃなくてナンちゃんだったと僕も思ったよ。 「それに、ナンちゃんとは付き合ってないですし。」 うん、意外だった。 こう言ったらなんだけど、新藤君って癖のない爽やかボーイだし普通にモテそうな感じなのにね。
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