ホウレンソウを怠るな

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それまで黙って僕たちのやり取りを聞いていた澤田さんが口を開いた。 「で、藤木は?彼女とどうするの?」 うっ。 ニコニコしながら聞いてくる澤田さんに悪気はない。 「ええと、結婚したいなって思ってるんですけど。付き合いだしたばっかりでそういうこと言って相手が引かないかとか考えちゃうって言うか。もしかして気持ちが盛り上がってるの、僕だけだったりして・・・みたいな感じで。」 言い訳がましいけど、そういうことも考える。 ズバッとプロポーズした山根君みたいに鮮やかなゴールは僕には無理な気がする。 ブラ男を彼氏として受け入れてくれても、結婚相手としはどうだろうとか。 じゃぁ、ブラをやめろって言われても。 もう生活の一部だし、自分の一部だし。 ブラがないと生きた心地がしないし。 欲張りだけど、ブラ男の僕と結婚して欲しいしなぁ。 「へー。俺の友達、出会って1年で結婚したヤツいるよ。友達はもっと早く結婚したかったみたいだけどね。山根はいつ頃結婚するかって決めてるの?」 「あ~。結婚することは決めてるんですけど、まだ日にちとかそういうことまでは決めてない感じです。」 おっとり口調の山根君。 そして、澤田さんのお友達の出会って1年で結婚。 どっちも眩しいなと思う。 僕って、こんなにウジウジしてたっけな。 「でも、俺も人のこと言えないけどね。彼女が大学を卒業したときに『5年くらいは働かないとねって先生が言ってたから5年くらいは頑張って働く』って言葉を真に受けてたんだからさ。」 へぇ、澤田さんでもそんな顔をするのかって感じの顔。 顔をくしゃっとさせて、幸せそうで、でもなんだかなって感じで。 お冷をごくりと飲んで。 「俺、その言葉を真に受けてたんだけどさ。結婚しても5年くらいは働くからって意味だったみたいでさっ。ははは。ずいぶん、待たせたみたい。こっちもそれなりに仕事もしていっぱいいっぱいだったのもあるんだけどね。」 仕事が大事だから奥さんが澤田さんを待ち続けていたのかと思いきや。 澤田さんが彼女の言葉を覚え続けていて結婚しなかったとは・・・。
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