ホウレンソウを怠るな

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僕の頭の中にエリーの叫び声が聴こえる。 ヒョーーーーー!!! そして、美味しそうに一口食べてゴクンと飲み込んでからの 「まいう~。」 と笑った顔も再生された。 目の前にいるのは山根君なのに。 ごめんね、山根君。 山根君は悪くないよ。 僕がエリーを好き過ぎるだけみたいだ。 割り箸を割って、カキフライにお箸を伸ばした。 エリーとカキフライと味噌カツを交換して食べた日のことを思い出した。 新藤さんとその彼氏さんの真似をしたんだった。 一番大きくて立派な味噌カツを惜しげもなく新藤さんにあげて物々交換をした姿に、大きな愛を感じたんだった。 噛みしめたカキフライからトロリと濃厚なカキの風味が広がった。 サクサクの衣といい、エリーが目の前にいたら僕も迷わず 「まいう~。」 って言いたい。 山根君相手にそれをするのも微妙だからしないけど。 山根君とイッシーもやってるかもしれないね。 それに、山根君とイッシーだったらお互いのワキの匂いを嗅ぎ合って、その匂いレベルを評価してるかもしれない。 あぁっ、楽しそう。 僕もエリーとワキの匂いを嗅ぎ合って、その匂いレベルを評価し合いたい。 だけど、僕がその匂いを嗅いだら、きっと興奮して押し倒しちゃうか。 ますます変態だ。 そんな願望、隠しておいた方がきっといいよね。 「山根ってどこでプロポーズしたの?藤木の参考に教えてやったら?」 山根君の斜めから澤田さんが声をかけた。 天ぷら定食についてるカボチャの天ぷらをチャポンと天つゆの中に入れてる最中の出来事。 「僕ですか。ええと。」 モジモジして恥ずかしそうにする山根君を見てる僕もなんかモジモジしたくなってくる。 「初めてお泊りしに来てくれたときに・・・。僕の初めてを捧げてプロポーズしました。」 「ブホッ。」 「ゴフッ。」 澤田さんと新藤君のナイスリアクション。 かくいう僕もカキフライがお皿の上に落下していった。 お皿の上で良かった。
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