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決して早い時間帯とは言えないけれども、そこまで深夜な時間帯にもなっていない名古屋駅周辺笹島交差点に響き渡る笑い声。
きっと、酔っ払いの集団に見えるに違いない。
新藤さんと山岸さんの間を通過してスピードを落としたから、そのまま振り返って、新藤さん達のところまで歩いて戻ったら丁度、横断歩道を残りのメンバーが笑いながら渡り終えてくるところだった。
「ベス、相変わらず、足が速いなー。」
イッシーに言われるも、実はイッシーの方が足が速い。
「100メーター道路で競争したときはイッシーのが速かったべ。」
私の言葉を聞いて、山岸さんが笑った。
「100メーター道路で競争って。面白いことしてんのな、君ら。みゅーの学生時代もこんなだったのか?」
「・・・ははは、まぁ、そうかな。」
歩き出した集団。
「新藤さんは学生時代に大学のサークル棟の屋上から叫んでましたよっ。『もうひと息賞って何だーーーー!!!大学デビューさせろーーーー!!!』って。ねっ、新藤さん!!!」
「はははっ。ベスちゃんだって叫んだじゃない。『ワキガじゃねー!!!ワキガールだーーー!!!』って。ふふっ。」
「やっべっ、楽しそうだなぁ。」
にこにこ笑う山岸さんの横顔がキレイだった。
夜だけど、道はそれなりに明るくて、車のライトもあるし。
素敵なサラリーマン代表みたいな感じ。
こんなに素敵なサラリーマンが合コンってと思うくらいにキレイな横顔とスーツ姿だ。
「山岸さん、僕たち、近鉄なんでここで帰ります、お疲れ様ですー。」
山根のおっとりとした口調に歩みを止めた我々。
「イッシー、途中で寝るなよ。ちゃんと家に帰れよ。」
「ベスほど酔っ払ってないから大丈夫。」
口ぐちに大人の挨拶
『お疲れ様でした。』
を発した後。
「紗那さん、御機嫌よう。」
キレイに頭を下げてペコリとしてやった。
「絵里さんも御機嫌よう。」
イッシーも私に向かって頭をペコリ。
それから二人で笑ってバイバイと手を振った。
イッシーと私だけの挨拶。
東京のお嬢様学校では『御機嫌よう』と挨拶するらしいと知った日から、素敵女子になるべく私とイッシーはこの挨拶を取り入れた。
背の高いイッシーと背の低い山根。
デコボココンビが近鉄方面に消える背中を見送った。
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