カフェ ユーフラテス 再び

6/7
前へ
/539ページ
次へ
「二人の世界に入ってるところ、悪いんだけど、浩ちゃん。」 カウンターの中から半分呆れ声で呆れ顔の千恵さんだ。 ん? みたいな感じで、パフェを口の中に含んだまま藤木が千恵さんを見た。 「来週の土曜日って、二人とも暇?暇よね?暇に決まってるわよね?」 暇人認定されてる私と藤木。 「僕は暇だよ。エリーは?」 「暇。」 「良かった。じゃぁ、これあげるから聴きに来てね。」 エプロンのポケットから二枚のチケットを出した千恵さんがそのチケットをカウンターの上に置いた。 第9を歌う会? 「エリー、ベートーベンの第9って知ってる?」 「合唱付き。それしか知らない。」 「じゃ、来週、本物を聴きに行こう。」 つまり、来週、千恵さんも参加するこの合唱に一緒に行こうって話だべか。 「いいけど、寝ちゃうかもしれないよ。」 「ぶはっ。いいよいいよ。大人しく席に座ってたら誰も文句言わないから。ねっ、千恵さん。」 しまった、舞台にあがる人の前で寝るかもしれない宣言をしてしまったべ。 「そうそう。知り合いが誰も聴きに来ないなんて淋しいからね。」 朗らかに笑う千恵さんの顔を見つつ、藤木の伯母さんらしいなと思う。 どことなく、おおらかな感じとか人としての器とかが大きそう。 「で、もうひとつ、話があるんだった。」 まだあるのって顔をしながらパフェを食べる手を休めない藤木。 尊敬だべ。 「この前、春さんと仁が来たわよ。浩ちゃんに可愛い彼女ができたって言ったら家に寄れだって。自分で言えばいいのにね、まったく仁もねぇ。」 藤木のお父様とお母様だべ。 家に寄れって言ったのは、話の内容から察するに、お父様。 「ふーん、元気そうだった?」 「元気そうだった。なんか元気ハツラツ過ぎて何事かと思ったら春さんと仁、ダイエットしてるとかって言ってね?春さんが酵素を飲んでるって言うから、私も酵素を飲むことにしたのよ。」 酵素? 酵素って何だべ。 「で、仁はプロテインを飲んで筋トレしてるとかって言って、腕の筋肉を見せてくるし。」 藤木のお父様、怖い人なのかと思いきや、プロテインで筋トレ。 なんか楽しいべっ。 「ふーん。で、千恵さん、酵素の効果あるの?」 一瞬の間。 「継続は力なりって言うでしょ。1週間やそこいらで効果が出るならみんなが飲むわよ、酵素!!!」 千恵さん、可愛いべ。
/539ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3464人が本棚に入れています
本棚に追加