まん類ホームラン

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目的のドライイーストを入手して、あっさりとスーパーを後にした。 「早く帰らないと暗くなっちゃうし、寒くなっちゃうからね。」 すでに寒いって話だべ。 「マラソンして帰ろうよ、寒い。」 一言、藤木に告げてランニング開始だべ。 隣に並んで藤木も軽くランニング。 こうなったら、隊列を乱さないように掛け声の必要性も出てくるべ。 「えっさ。」 言ってみたけど、掛け声がかからないべ。 「コージー、おいさって言ってくれないと盛り上がりに欠ける。」 「ぶはっ、そんなこと言うの?」 「言うに決まってんじゃん。」 「えっさ。」 「おいさ。」 「えっさ。」 「おいさ。」 二人の足並みは揃ってるべ。 そのまま藤木の家の近くまで走ってきたところで思い出した。 今夜の夕飯はまん類。 そして、やっぱりここはやっておくべきだ。 「満塁で迎えた9回裏逆転サヨナラのチャンス。ピッチャー藤木コージー、バッター富田エリー。藤木、投げた。カキーン、富田、初球打ち、伸びる伸びる、入るか入るか入るか、入ったーーーー!!!逆転サヨナラ満塁ホームランでっす!!!」 自作自演の逆転サヨナラ満塁ホームランとともに、藤木の家の前まで両手を挙げて走ってみたべ。 藤木は私の後ろで笑ってる。 その声が近付いてきて、物置コーナーの扉の前で追いついた。 「本当におバカさんだね。」 藤木のおバカさんには愛があるべ。 だから、それが聞きたくて、それを言わせたくて、ついつい必要以上におバカさんなことをしたくなる。 いや、藤木が目の前にいると思うと嬉しくて調子に乗ってしまうのもある。
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