まん類ホームラン

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「エリー一等兵はまん類の皮を作ってね。はい、これ。これを捏ねて捏ねて捏ねて捏ねれば出来上がるから。」 藤木の自宅でまったりと藤木が夕飯を作るのを待つのかなと思っていたら、材料が入ったボウルを手渡されたべ。 なるほど、まん類の皮を捏ねて作れと申すか。 「コージー上等兵は何をするの?」 「ん?お野菜さんとお肉で肉まんの具を作るよ。」 「アイアイサー。」 手にへばりつくねちょねちょ。 そのねちょせちょを無視して捏ね続けたら、なんだか生地がまとまってくる。 「じょーとーへーいぃ!!!」 「ぶはっ、それを言うなら衛生兵でしょ、おバカさん。」 「おバカさんじゃなくって、今は一等兵であります。いつまで捏ねればよろしいのでありますか?」 流しのところでせっせと材料を切っていたであろう藤木を呼んだ。 私の持ち場はその後ろの小さなテーブルだべ。 寒いからいつもコタツで食事をしてしまうけれども、一応、台所にも小さなテーブルがある。 夏は、ここで藤木もご飯を食べているのかもしれないべ。 手を軽く洗って、手拭で拭いた後でこっちに来た藤木。 私の横に並び、右肩すぐ上からボウルを覗きこんだ。 「もっともっと捏ねて捏ねて捏ねると表面がツルツルな感じになるんだって。それで耳たぶぐらいの柔らかさになったら終わっていいよ。」 ウホッ、まじかてっ。 もっともっと捏ね繰りまわせってか。 疲れちゃうじゃんとは思うけれども、今、私は一等兵で藤木は上等兵なんだから文句は言えない。 「アイアイサー。」 捏ね繰り開始だべ。 耳たぶぐらい、耳たぶぐらいね。 料理は案外力仕事だべ。 私が作業を再開したのを見て、藤木も持ち場に戻って行った。
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