3465人が本棚に入れています
本棚に追加
/539ページ
「お疲れ様でした。」
大人の挨拶を交わして、藤木以外のメンバーとは別々のホームに向かうことになることに少し淋しさを感じていたら山岸さんがこっちを向いた。
「すごい楽しかったから、また、一緒に飲もうよ。」
キラキラキラキラ―っと山岸さんの周りに星が散った気がした。
「はい、喜んでっ!!!」
しまった、こんなときまで居酒屋店員風の返事をして、笑いを提供してしまった。
山岸さん達のさざ波のような笑い声。
それから、本当に別々のホームに別れて歩いた。
・・・隣には藤木。
頭がデカい。
さっきまでは、他のメンバーとも一緒だったけど今は藤木と二人きり。
この頭のデカい藤木と二人でいて、他人の視線を感じなくもねーべって感じだ。
私は藤木とは無関係です。
どうか、こんな時間に二人でいるからと言って、あらぬ想像をしないで下さい。
そんな気持ちを抱いてしまった。
人を見かけで判断しちゃダメって言うけど・・・著しく面白い頭をしてる時点でアウトっしょ。
見かけも大事だべ。
赤電車がやってくる。
急行だ。
半島方面行きか。
これじゃない。
「ベス、どの電車?」
「急行です。藤木は?」
「僕は東岡崎まで。」
「へぇ、じゃぁ、特急ですよね。あっ、来ましたよ。」
目の前に特急豊橋行がタイムリーに到着した。
ドアが開いて・・・なぜ、乗らない?
そして、疑問に思っているうちにドアが閉まった。
「・・・これじゃなかったんですか?」
「これだったけど、普通、これに乗らないでしょ。一緒にいるんだし。」
ヘルメット頭がこっちを向いたと思ったら、私と藤木を人差し指でそれぞれ指し示した。
一緒にいるから特急には乗らないってさ・・・。
「・・・急行で帰るんですか?」
「そう。時間も遅いし、電車の中で変な輩に絡まれないとも限らないでしょ。」
いやいや、私の愛する赤電車でそんなわけ・・・ないとは言えないけど。
紳士なヘルメット頭にキュンとしたのは、きっと酔っているせいに違いない。
最初のコメントを投稿しよう!