藤木浩二の独り言 パート7

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静かな室内。 隣で口元をむにゃむにゃさせながら、僕の腕にすり寄るエリー。 一人で寝てるときには、気にしたこともなかったけれども、この部屋に暖房器具を買ってきた方がいいかな。 それとも、エリーがお泊りに来る日だけ、エアコンのある居間に布団を運んでそこで寝るようにしようかな。 もっとも、僕よりも元気で丈夫そうだけど。 ふっと、彼女の寝顔を見ながら頬が緩んだ。 彼女は今夜も僕の下着にご執心だった。 「本当に?本当に選んでいいの?ひゃっほい♪」 僕の下着の入ってるケースの前で小躍りをして、そうっとケースを引きだした。 「フォーーーーーーーー!!!」 いつものように、奇声を発しながらも僕の下着を触る手は慎重で丁寧。 僕の下着への丁寧な接し方に、胸がときめいた。 もっと、乱暴にガサツにどれにしようかなとやられたら、ちょっと嫌だったから。 意外にも、そんなことはせずに、目をキラキラさせながら選んでいた。 彼女が選んだのは水玉の下着。 繊細なレースとかスケスケとか、そういうちょっとお洒落なのを選ぶのかと思っていたから意外だった。 エリーを物置部屋から追い出して、その下着を身につけた。 「コージー、コージー。何でそれを選んだのか教えてあげようか?」 着替えている僕に襖越しに話しかけてくるエリー。 「うん。何で?」 「ウホッ」 エリーがウホって言ったのが聞こえて吹きだしそうになった。 ウホッて人間の女の子が使ってるのをあんまり聞いたことがないぞ。 いや、初めてだ。 「おそろにしてみた!」 嬉しそうな声。 嬉しそうな声でおそろにしてみたと言われて、笑ってしまった。 まさか、下着をお揃いにするって考えもつかなかった。 アレみたいだ。 高校生の時に、カップルが服の下にこっそりチェーンに通したペアリングを身に着けてるみたい。 くすぐったい感覚。 来年には30歳になるオジサンな僕が、そんなくすぐったい感覚を、服の下に隠し持ってるって。 相手がエリーじゃなきゃ、きっとできなかったと思う。 「早くー。早くー。」 子供のように、ワクワクしてることを隠さない彼女の声に応えて、襖を開けた。
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