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「これでいい?電車。」
やってきた電車は急行豊川稲荷行き。
「あっ、はい。」
「ほら、乗るよ。」
本当に急行で帰る気なのか。
腕を掴まれ、そのまま一緒に電車に乗ってしまった。
正直、殿方に腕を掴まれる経験なんて最近ではめっきりないからドキっとした。
でも、電車に乗って藤木の頭を見て消えた。
私のドキっが消えた。
見てるだけで笑いを誘ってくるヘルメットのような頭。
見慣れてこない。
いや、これを見慣れたら大概のモノでは笑えなくなるべ。
ロングシートの座席に二人並んで座った。
反対側の窓に映る藤木の頭のデカさ・・・。
「ベス、酔いが醒めてきたら敬語で話してるな。」
「そうですか・・・ですね・・・はい。」
藤木の体が揺れる。
そして、窓に映る藤木の頭も左右に触れる。
「いつも、飲むとあんな感じ?」
「・・・はい。」
一度、冷静になってしまうと藤木に藤木と呼んでることも失礼な気がしてきたし、ソース味のアルコールで攻撃したことも、ワキ汗ホルムをしてしまったことも・・・痛いな。
「ベスは、仕事は何してるの?って言うか、普通、飲み会のときにそういう話題の一つや二つ出ても良さそうなのにね。」
た、確かに、そういうパーソナルな情報なんて何も話してなかった気がする。
純粋に楽しく飲んで食べて笑って。
「仕事は、会社員です。」
「ふっ、大概の人は会社員でしょ。」
た、確かに。
いや、でも、イッシーが付き合う相手はいつもフリーターとかヒモみたいな輩だったし。
どこで拾ってくるのかデザイナー志望の学生だったり、ロック歌手を夢見るモヒカン頭だったり。
『ビッグになってやる』
とかって言ってるタイプ。
それも、ワッキーな臭い付きのままくんずほぐれつして終了したんだっけな。
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