愛しい時間

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「あっ、絵里、たんまたんま。」 私の手が宣戦布告を受け入れて、攻撃的な動きに変わった瞬間の藤木の言葉。 ふふふっ。 「待つとどうなるの?」 「下着、つけてきてあげる。」 「ぶはっ。いいね。ハートの柄のがいい。」 昨日、藤木の引き出しで見たハート柄が可愛かった。 正直、昨日の夜ハート柄と水玉で迷ったべ。 「了解。待っててね。」 ちゅっと唇に軽いキスを落として、寒そうにしながら隣の物置部屋に消えて行った藤木の姿。 襖が開いて、閉まる音を聞いた。 そして、藤木が下着を入れてるケースを引き出してる音。 物音が小さくなったのは、下着を取りだしてる音かな。 それから、身に着けてる音。 ほんの些細な音が響く夜明け前の澄んだ空気。 また襖が開いて閉じて、こそこそと藤木が布団に入ってきた。 布団に入って、私の隣で横になる藤木の顔はイタズラをしてる子供のように生き生きとして見える。 クスクスと笑いながら 「僕って幸せ。」 と笑うもんだから、 「私も幸せ。」 と返した。 二人で笑いながら乳繰り合うのは、夜の粘着質な空気を孕んだ行為とはまた違って、楽しい。 「笑いながらすることなのかな、これって。」 私の上で体を繋げながら聞かれて、笑ってしまった。 「笑いながらしてる人に聞かれても説得力がない。」 「だねっ。最後くらいは真面目に頑張るよ。」 「ぶはっ、笑かせないでよ。」 「もう、笑わないでってば。こっちまで笑えてくるでしょ。」 笑いが渦巻く情事って何だよ。 もっと、艶っぽさとかあってもいいべ? そう思うのに、楽しくて笑うことがやめられない時間は最高に愛しい。
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